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ろんごとバイブル
論語とバイブル
正宗 白鳥
「読売新聞」1904(明治37)年10月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,417 字 · 5 页
金の方が神よりも尊く見えて来る。悲む者はよいとか、病気するはよいとか、七ツの祝福何れも常識のある人間の首肯し難い者のみである。「我れ世に来るは平和を齎さんとに非ず、子を親に背かせ……。」は恕すべからざる不埒な言である。正義の為には夫婦離反してもよいというかも知れぬが、世に親子夫婦睦まじく笑って暮すよりも重んずべき主義があろうか。生中宗教がある為に宗旨争いで家庭の不和が生ずることは随分ある。「一里行けと命ぜらるれば二里行け。」とか「上衣を取らるれば下着を与えよ。」とか、行うべからざる教えである。いかに耶蘇崇拝家でも癇の虫があるからこれには全然従われぬと見え、様々にこれを曲解しているが、無心に見れば、個人を蔑視した暴論である。姦淫の訓戒も人間固有の性に背いている。全章只一つ吾人の気に入る文句は、「明日は明日の事を思い煩え、一日の苦労は一日にて足れり。」と今日主義、酔生夢死主義を鼓吹した事である。
しかし耶蘇の説教は実行すべからざる空論として読めば、常規を離れている丈に面白い、其の生涯も詩人風で芝居的である。新旧全書共に眠気醒しにならんでもないが、論語に至っては世にも稀らしき平々凡々、砂を噛むが如き書物である。