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とうふかい
豆腐買い
岡本 かの子
「三田文学」1934(昭和9)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,329 字 · 29 页
急に斜に外れて巴里昼間新聞を買う人の起すかすかな空気のうずまき。首尾よく流れを逆に上り切って桃色と白のカフェ・ローポアンで一休み。そこで喰べた胡桃の飴菓子。
だが日本の通行人は急ぐように見えてもテンポは遅い。それでいて激しい感じは一層する。二つずつ向って来る黒い瞳。奥底の知れぬ怜悧。カラーとネクタイが無くて襟の合せ目からシャツと胸の肉の覗く和服姿。男が女のように見えるインバネス。無言の二人連れ。アメリカ風の女の洋装。
加奈子のあとをつけて来た少年は流れの勢に押し流されもう見えなくなった。その代りにもっと小さい十三四の中学生が気付かれないように手に握ったボールを見つめているふりをしながら溝端の石の上を加奈子と並んで歩いて来る。ちょいちょい加奈子を横目でみるところはやっぱり加奈子をつけて来るのだ。
加奈子はショールの間から短い指の手を出して拡げて裏表を見せてやる。すると顔を赭くして急に駆け出した。
お京さんが夫のアンリーのところを逃げ出す前にお京さんは加奈子にこういったことがあった。
――異人さんと一緒にいると始終用心してなきゃならないのよ。いつ唇が飛びかかって来るか知れないから。