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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

今最後の発育を遂げようとしている総ての作物が、荒い風に会い、強雨にたたかれるということは憂うべきことである。

で、彼等は田の見廻りや何かにせわしく、私共の畑も三人の小作男で、十分に囲われたり突支(つっか)い棒をあてがわれたりした。

早くから閉め切った部屋の中にとじ籠って、次第に吹き荒れて行く戸外の雨の音を聞いていると、私共は皆何だか気味悪くて離れ離れめいめいの部屋に落着いていられないような気持になった。

家中は皆茶の間に集った。

雨戸にガタガタぶつかっては外(そ)れて行く風の音、どこかの軋むキーキーいう響に交って、おびえたような野犬の遠吠えが陰気に凄く皆の心をおびやかして、千切れて飛んで行った。

風は次第に強くなって来る。薄ら明りの空を走る雲の足なみが早くなるにつれて、東南の暴風は立木という立木、家屋という家屋のあらんかぎりを吹き倒さないでは置かないというように吹き始めた。

砂煙が短い渦巻になって吹き上り、人気ない往還をあっちこっちとかけずり廻る。樹木の総ては、その頭を狂乱したように打ち振り打ち振り、小枝は白い肌を生々しく引き裂かれて飛び、幹は苦しげに軋み唸り、鋭い悲鳴をあげて揺れている。