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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
歩き出しの子供が、面白さに夜眠ることも忘れて歩きたがる通りに、私も一人でも自分の何かしてやることの出来る者が殖えれば殖えるほど、元気が付いた。
また実際、どれだけしてやったらそれで好いという見越しはつかないほど、いろいろな物が乏しく足らぬ勝であったのだ。
私は、自分の出来るだけのことを尽そうとした。
けれども、私は「自分のもの」という一銭の金も一粒の米も持っていないので、誰に何を一つやろうにも一々祖母にたのんで出してもらわなければならない。
それが、私のしようとすることが多くなればなるほど屡々になり、随ってだんだんたのむのが苦痛になって来る。
が、然しそれは仕方がなかった。私はほんとに、無尽な財産がほしかった。そして、この村中を驚くほど調った、或る程度まで楽な者の集りにして、貧しい者は人間だと思わないような者共の前に、突きつけてやったらと思わない訳には行かなかったのである。
九
いろいろの新しい経験が、私の心を喜ばせたり、驚かせたりしている間に、たゆみない時の力は、せっせと真夏のすべての様子を育て始めた。
日光は著しく熱くなり、往還にたまった白い塵は、益々厚くなって一吹き風が渡る毎に、灰色の渦巻を起す。