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まずしきひとびとのむれ

貧しき人々の群

宮本 百合子

「中央公論」1916(大正5)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页

青空文庫

この有様に私はすっかりまごついてしまった。どうかして、誰一人厭な目を見ないで、納まりをつけてしまいたい。

けれども、これにはどうしたら好いのかということになれば何一つ私には分っていないのである。

まるで、真暗な中で、どこにあるか分らないマッチと手燭を捜しているようで、世馴れない心は、すっかり気味が悪くなり、おびえてしまった。

その上、何か一つ盗られる度に祖母が、さも辛そうにまた皮肉に、

「今まではなかったこった。ああほんとになかったことだがねえ」

と、つぶやくのを聞かなければならないのである。

私は、自分のしたことは間違っていなかったと断言出来る。そしてまた、一方では、彼等がこうなるように心を誘われたのは決して無理ではないと思う。

そうすれば、結局どっちの遣りようが悪かったのだろう? 私は心の命ずるままにしたのだ。彼等もまた必要上、しなければならないような境遇にいたのだ。両方ながら「そうしなければならないから」したのではないか? 彼等もこうならずにはいられなかったのだろうし、私もまたああしなければいられなかったのだ。或は、私の方がこうなる機会を与えたようなものだから、間違っていたかもしれないとも思っては見たけれども、そうだと断定することは出来ない。