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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
を着た女房が、幽霊のような娘を真中にして、ピッタリとお辞儀をした。
会長夫人はふくみ声で難かしい漢語を交えながら、今度の自分等の目的を説明した。
桶屋夫婦は、何のことやらさっぱり分らなかったけれども、ただお辞儀ばかりをしていると、会長夫人はちょっと指で合図をした。
すると、中の一人が朱塗りの盆の上に大きな水引のかかった包みをのせて差し出し、集った者どもの羨望のささやきにとりまかれて、桶屋の前に据えられた。
彼等は、飛びつきたいほど嬉しかった。けれども、強いて落着いて云えるだけお礼を云いお世辞を並べながら続けさまに頭を下げた。
そして、仕舞いには腹が立って来て、
「人こけにしてけつかる。行げっちゃあ!」
と怒鳴りたくなって来るまで、婦人達はだまって頭を上げたり下げたりさせて見ていたのである。
ついに婦人は動き出した。彼等はホッとした。
そして、まだ一人二人の女は自分の軒の前にいるのにもかまわず、桶屋夫婦は包みを両方から引っぱって、急いでまごつきながら開けて見た。
中には五円札が一枚入っていた。
二人は札の面を見た瞬間、弾(はじ)かれたように顔を見合せて、ニヤリとした。