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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
「当分楽が出来んなあ」
「ほんによ。そんにこんねえだの帯も買(け)えるしな」
女房は云ってしまってからハッと気が付いて、娘の方を見ると、ぼんやり疲れきったようにして、揉みくちゃになった水引だの、「病人見舞金」と楷書で書いてある包紙を見ている。
女房はチョッと舌打をして、男に耳こすりをした。亭主もその紙を見て、娘を見て云った。
「なあに大丈夫よ。奴にゃあ分んねえ」
娘は、暫くすると、よろよろしながら臭い夜具を引きずって、また暗くじめじめした奥へ引っこんでしまったのである。
婦人連は、一軒一軒に同じ文句を繰返しては、鷹揚(おうよう)に会釈をし、自分の品を上げるとも下げないほどの同情を表した。
そして特に会長夫人は、いつも「ええ、そう、そう、そう、そうですよ」と胸まで首を曲げて返事をする代りに、今日は黙って大きくうなずくだけであった。而も心の中では「ああよしよし」とつぶやきながら。
一行は行く先々で感謝せられ尊敬せられまた驚かされた。
婦人達は皆、自分の仕事に満足した。
「人にほどこしをするのは、何て面白いのだろう!」
けれども、だんだん疲れて来ると、同じようなお辞儀だの、お礼だのを聞くのにも倦きて来たし、自分等も一々丁寧に同情を表したり説明したりするのも厭になって来て、仕舞いには、会長夫人がちょっと立ちどまって会釈