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まずしきひとびとのむれ
貧しき人々の群
宮本 百合子
「中央公論」1916(大正5)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 59,959 字 · 118 页
するあとから、直ぐ金包みを投げ込んで、先へ先へと急行しはじめた。
後についている者共も、だんだん馴れるにしたがって、婦人達に聞えるほどの悪口を云ったり品定めをしたりするようになったので、婦人達は、益々うんざりして来た。
喉が乾いたり、暑かったり、化粧崩れに気が気でなくなった一行が、皆いらいらした気持で或る百姓家の前に来かかったとき、いきなり行手を塞いで焼けつくような地面に坐り込んだ者がある。
あまり突然なことにびっくりして、婦人連は後しざりをしようとすると、すぐ手近に立っていた一人の裾を両手で掴みながら、
「おっかねえもんじゃありゃせん。どうぞお願(ねげ)えをお聞き下され」
と涙声を振り絞ったのは、誰あろう善馬鹿のおふくろである。
婆の後には、善馬鹿と白痴の子がぼんやり立っている。婦人達はまごつき、ついて来た手合は笑いながら立ちどまった。
狒々婆(ひひばばあ)は軋むような声を張りあげた。
「お情深(ぶけ)え奥様方! どうぞこの気違(きちげ)え息子と、口も利(もと)んねえ馬鹿な餓鬼を御覧下さりやせ」
「どうぞ奥様! 俺らがようなものこそー憫然(ふびん)がって下さりやせ。