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ひんみんくらぶ

貧民倶楽部

泉 鏡花

「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页

青空文庫

何を御褒美に上げようかしら、ああ良い品があったっけ、姉様とさあ一所に光来。」と手を曳きて家に入り、黒くなりたる櫃の上に、美しき手毬のありしを、女の児に与うれば、気味悪そうに手に取りて、「こりゃ何。」と怪訝顔。「手毬だよ。知らないの。」「手毬って何。」とさっぱり解らず。

美人は優しき眼にてじっと視れば、いかさまかかる遊戯品は知らぬも道理の扮装なり。不便なものよと思うにぞ、

「これはね、こうするものだよ、見ておいで。」と袂を啣えて一い二ウ三い四ウ、都の手振なよやかに、柳の腰つきしなやかなるを、女の児は傍目も触らず、首傾けて恍惚れいる。

ここはいずこぞ鮫ヶ橋、白日闇の木賃宿にしかき姿あるは怪むべし。

火鉢に懸けたる土瓶の煮ゆる音、ジュー。

二三十つきたる美人はこれに心着きて手を留め、

「おや、忘れていた、もう煮詰ったようだ。」と蓋を取れば、煎薬の香芬々。すぐに下して、「お前ねえ。」と女の児を見返れば、頻りに毬を弄べり。美人は微笑を含みて、「つけますかい。」

「いいえ。」と少し嬌羞む。

「戻ってまた教えて進げよう。お前がお在でちょうど可い。誰も居ないから留守しておくれ。