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ひんみんくらぶ
貧民倶楽部
泉 鏡花
「北海道毎日新聞」1895(明治28)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 55,333 字 · 111 页
」と芳原さしてどろんとなる。
府下の処々より旧藩士の面々が御家の大事と早車にて乗附くる。御出入の商人、職人、盆栽のお見出しに預りたる植木屋までが、驚破鎌倉と馳参じ、玄関狭しと詰懸け詰懸け、夜一夜眠らで明くる頃、門内へ引込みたる母衣懸の人力車、彼はと見れば、こりゃどうじゃ。
「御帰館――」と叫ぶにつれ、老婦人衝と出でて、式台に成らせたまえば、一同眼の覚めたる心地して、万歳を哄と唱え、左右にずらりと平伏するを、見向もせで、足疾に仏室の内、隔の障子を閉切りたまいぬ。
「はて、面妖な。只事でない。」と家令を先に敷居越し、恐る恐る襖を開きて、御容顔を見奉れば、徹夜の御目落窪みて、御衣服は泥まぶれ、激しき御怒の気色顕れたり。
「はッ恐れながら。」と冒頭して、さて御機嫌を伺えば、枯れたる声を絞らせたまい、「退りや、退りや。」と取っても附けず。
家令は少しくにじり出で、畳を額に埋みながら、「これは仰とも覚えませぬ。一晩御帰邸相成りませぬで一統の者の心痛いかばかり、まずは御安泰にて恐悦に存じまする。さりながら御顔の色も尋常ならず、一同安心のなりまするよう、仔細御申聞けのほどを、はッはッ。