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あかいへや

赤い部屋

江戸川 乱歩

「新青年」博文館、1925(大正14)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,114 字 · 36 页

青空文庫

という変な声はやまなかった。それは胸の底からしぼり出される苦痛の唸り声の様でもあった。だが……、若しや……オオ、矢張りそうだったのか、彼は意外にも、さい前から耐らないおかしさをじっと噛み殺していたのだった。「皆さん」彼はもう大声に笑い出しながら叫んだ。「皆さん。分りましたか、これが」

すると、ああ、これは又どうしたことであろう。今の今まであの様に泣入っていた給仕女が、いきなり快活に立上ったかと思うと、もうもう耐らないという様に、身体をくの字にして、これも亦笑いこけるのだった。

「これはね」やがてT氏は、あっけにとられた私達の前に、一つの小さな円筒形のものを、掌にのせてさし出しながら説明した。「牛の膀胱で作った弾丸なのですよ。中に赤インキが一杯入れてあって、命中すれば、それが流れ出す仕掛けです。それからね。この弾丸が偽物だったと同じ様に、さっきからの私の身の上話というものはね、始めから了いまで、みんな作りごとなんですよ。でも、私はこれで、仲々お芝居はうまいものでしょう……。さて、退屈屋の皆さん。こんなことでは、皆さんが始終お求めなすっている、あの刺戟とやらにはなりませんでしょうかしら……」