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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
05 徒労に賭ける
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,113 字 · 35 页
と去定は云った、「医者と喧嘩をして逃げるやつが云うんだ、あの医者の手にかかると命が危ない、――きさまたちもよく考えるほうがいい、おれは命は取らないが、それでも手足の二本や三本、へし折るぐらいのことはやりかねないぞ」
裸の男、たぶんこの中のあにき分だろうか、ふんとせせら笑いをしながら、みくびったようすで去定のほうへ近よった。
「じじい」と彼は問いかけた、「てめえ本当にやる気なのか」
「よしたほうがいい」と去定が云った、「断わっておくがよしたほうがいいぞ」
男は突然、去定にとびかかった。
登はあっけにとられ、口をあいたまま茫然と立っていた。裸の男がとびかかるのははっきり見たが、あとは六人の躯が縺れあい、とびちがうので、誰が誰とも見分けがつかなかった。そのあいまに、骨の折れるぶきみな音や、相打つ肉、拳の音などと共に、男たちの怒号と悲鳴が聞え、だが、呼吸にして十五六ほどの僅かな時が経つと、男たちの四人は地面にのびてしまい、去定が一人を組伏せていた。のびている男たちは苦痛の呻きをもらし、一人は泣きながら、右の足をつかんで身もだえをしていた。
「さあ云え」と去定は組伏せた男――それはあにき分とみえる裸の若者だったが、その男の首を片手で責めながら云った、「誰に頼まれてした、誰だ、云え、云わぬとこのまま絞めおとすぞ」