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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

07 おくめ殺し

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 页

青空文庫

所付きの与力から呼ばれて、「かよい療治は一切ならぬ」ということ、同時に、入所している病人でも、身内に多少でも稼ぐ者がある場合には「食費を取る」ように、ということを云われたのであった。

「富者の万燈より貧者の一燈ということがある」と歩きながら去定が続けた、「これは貧者の信心こそ仏の意志にかなうという意味らしいが、じつはまったくのたばかりだ」

万燈を献ずる富者には限りがあるし、いつも万燈を献ずるものではない。だが、一燈しか献ずることのできない貧者は多数であって、しかも、一燈くらいの寄進ならいつでも応ずるだろう。「仏への供養」は来世へのつながりであり、安楽往生のみちだという。この世で貧苦にいためつけられ、一生うだつのあがらない人たちは、せめて安楽往生、来世での成仏ということに頼りたくなる。その弱身をつかんで、一燈をたばかり取るわる賢さは、政治にそのまま通じているようだ。

「幕府の経済が年貢運上によって成り立つことはいうまでもない」と去定は云っていた、「しかし、それを支えているものはつねに、もっとも多数の小商人や小百姓や職人たちだ、その例をここで並べる必要はないだろうし、その是非については一概に云えない面もある、それにしても、かれらが日雇い人足の僅かな賃銭にまで運上を課することや、施療を受けているような病人から食費