轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

07 おくめ殺し

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 页

青空文庫

二

「誰もいないようだ」

「やりそくなった、ちくしょう」と男は呻いた、「もうちっとのところだったのに」

「喧嘩だな」

「野郎を一人殺すつもりだったんですが」と男は答えた、「向うに用心棒がいて、こっちのほうがこのざまです、済みませんが立たしてくれませんか」

去定が「竹造」と云い、提灯を受取った。竹造は溝の中へはいり、男の両腕へ手を入れて、そっと抱き起こした。男は辛うじて立ちあがったが、右足ががくんとなり、するどく呻きながら、崩れるように坐りこんだ。去定は提灯を登に渡し、男の側へ寄って、右の足をしばらせた。

「脛の骨だな」と去定が云った、「折れてはいないようだ、たぶん罅でも入ったのだろう、竹造、おぶってやれ」

「どうするんですか」と男が不安そうに訊いた。

「どうするって」と去定が怒ったように云った、「おれは医者だと云ったろう」

「しかし、あっしは」

「竹造」と去定が云った、「おぶってやれ」

竹造は男を背負い、去定は大股に歩きだした。

二

男の名は角三といい、年は二十五。住居は小石川音羽の五丁目、藪下と呼ばれるところにあった。養生所へ伴れていって診ると、傷は頭に二カ所、肩から背中、腰、足などに五六カ所あって、頭だけは刃物の傷だが、ほかはみな棒かなにかで撲られたらしく、脛の骨には罅が入っていた。