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あかひげしんりょうたん
赤ひげ診療譚
山本 周五郎
07 おくめ殺し
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,548 字 · 47 页
高田屋松次郎は四時ちょっと過ぎに来た。このあいだの伊蔵と、べつの若者が二人ついており、松次郎と伊蔵だけがあがった。角三が話しているあいだに、登は松次郎を横からよく眺めた。二十三歳だと聞いたが、三つ四つはふけてみえる。中肉中背で、どこにこれという特徴もなく、ただその眼つきや、ものの云いぶりなどに、あまやかされて育った人間の、権高な、こわいもの知らずといった感じが、露骨にあらわれていた。
「それは慥かなんだね」と松次郎が問い返した、「よもや作りごとじゃあないだろうね」
「ごらんになればわかります」と角三が答えた、「あっしたちみてえな頭のちょろい人間に、高田屋さんほどのきれ者を騙せるわけがねえ、それほどの脳天気でもねえし、こちらに小石川養生所の保本先生がいらっしゃる、先生が証人になって下さるんだから、ともかく証拠を見てもらおうじゃありませんか」
松次郎は振向いて登を見た。
「保本登だ」と登は云った。
「高田屋の松次郎です」と云って、松次郎は登の服装をじろじろ見た、「その着物は知っています、たしか養生所の先生がたの、お仕着でしたね」
お仕着という言葉に一種の調子があった。