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あかひげしんりょうたん

赤ひげ診療譚

山本 周五郎

08 氷の下の芽

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,146 字 · 40 页

青空文庫

と登が云った。

「覚えていてくれたとはうれしいね」と玄三は皮肉なうす笑いをみせた、「保本とはいつも入れ替りになるんだな、こんどはおれが元返りをするわけだがね」

登は半太夫を見た。半太夫は眉をしかめて、そっぽを向いていた。

「あの女をどうする」と津川が訊いた。

「新出先生が会うことになっているんだ」と登が云った、「先生が帰るまで待てと云ってもらおうか」

「酔っているぜ」と津川が云った、「控所で喚きたてているが、いいかい」

登はちょっと考えてから云った、「じゃあおれが会おう、おれの部屋へ伴れて来てくれ」

「あなたのお部屋へ、ね」と津川は一揖して云った、「かしこまりました、若先生」

半太夫はぐっと拳をにぎった。登は去ってゆく津川を見送りながら、「気にするな」と半太夫に云った。

「気にするなって、――」と半太夫は振返って云った、「出てゆく保本はいいだろうが、おれはあいつといっしょに」

「ああ」と登は立ちながら手を振った、「そういきまかないでくれ、あいつはここにいやあしないよ、そのことは話したじゃないか」

半太夫はにぎった拳をひらき、それをまたぎゅっとにぎり緊めた。

「だが」