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あかさかじょうのからくり

赤坂城の謀略

国枝 史郎

「日の出」1935(昭和10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

……やア汝等寸刻といえども、油断をするな、用意怠るな!」

こう部下に命を伝え、自己も鎧の上帯を解かず、部下にも帯を解かしめず、馬の鞍をも休めようとはせず、まして夜な夜なを眠らず眠らせず、敵の押し寄せ来るを待ちかまえた。

然るにその後も依然として、遠篝は山々谷々に、また浦々に燃えつづいたが、寄せて来ようとはしなかった。

大将公綱を初めとし、紀清両党の郎党たちも、追々惰気を催して来、しかも思い切って心を許し、眠に入ることが出来なかったので、身心次第に疲労れ衰弱えて、戦意頓に失われ、退陣したいものと思うようになった。

四

天王寺の陣を引いた正成は、数里はなれた櫨子原に、幔幕ばかりの陣を張り、悠々と機をうかがっていた。

或夜正遠と定仏とをつれ、陣々をひそかに見回りながら小高い丘の頂まで来た。

はるかの彼方に天王寺があって、その辺に敷いてある公綱の陣から、立ちのぼる篝の火が空に映じ、ほの明るさを見せていたが、いつもの夜よりも火光は弱く、衰えの様が感じられた。

「正遠」

と、正成は愉快そうに云った。

「明日は天王寺へ帰ることが出来るぞ」

「は?」

と、正遠はいぶかしそうに、