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あかさかじょうのからくり

赤坂城の謀略

国枝 史郎

「日の出」1935(昭和10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

一

(これは駄目だ)

と正成は思った。

(兵糧が尽き水も尽きた。それに人数は僅か五百余人だ。然るに寄手の勢と来ては、二十万人に余るだろう。それも笠置を落城させて、意気軒昂たる者共だ。しかも長期の策を執り、この城を遠征めにしようとしている。とうてい籠城は覚束ない)

そこで、正成は将卒をあつめ、しみじみとした口調で申し渡した。

「この間は数箇度の合戦に打ち勝ち、敵を亡ぼすこと数を知らず、正成くれぐれも有難く思うぞ。が、敵大勢なれば物の数ともせず、囲みを解いて去るべくも見えぬ。然るに城中はすでに食尽き、援兵の来る望みもない。……元来天下の衆に先立ち、草創の功を志す以上、節に当り義に臨んでは、命を惜むべきではない。とはいえ事に臨んで恐れ、謀を好んで為すは勇士の為すところと、既に孔夫子も申しておる。されば暫くこの城を落ちて、正成自害したる態になし、敵の耳目を一時眩まそうと思う。……正成自害したりと思わば、関東勢さだめて喜びをなし、下向するに相違ない。下らば正成打って出で、また上らば山野にかくれ、四五回東国勢を悩まさんか、彼等といえども退屈するであろう。