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あかさかじょうのからくり

赤坂城の謀略

国枝 史郎

「日の出」1935(昭和10)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

元弘二年八月三日、この日はよく晴れた秋日和で、松林では鳩が啼き、天王寺の塔の甍には、陽が銀箔のようにあたっていた。

白鞍置いた馬、白覆輪の太刀、それに鎧一領を副え、徒者数人に曳き持たせ、正成は天王寺へ参詣し、大般若経転読の布施として献じ、髯の白い老いた長老に会い、正成不肖の身をもって、一大事思い立ちたる事由を審さに述べたるのち、虔ましく居ずまいを正し、「承わりますれば、上宮太子厩戸皇子様、百王治天の安危を勘え、日本一州の未来記を認め、この寺院に秘蔵あそばさるるとか。もし拝見苦しからずば、現代に関わる箇所だけなりとも、是非とも拝見仕りたく、如何のものにござりましょうや?」

すると長老は深く頷いて、

「万代の秘書にはござりまするが、多門兵衛様には忠誠丹心、まことの武夫と存じますれば、別儀をもちまして、お眼にかけるでござりましょう」

と云い、一旦奥へはいったが、やがて金軸の書一巻を、恭しく捧げて現われた。

正成は悦び譬うるものなく、謹みかしこんで両手に受け、徐に開いて読んで行った。

不思議の一連が眼にうつった。

「人王九十五代ニ当ツテ、天下一度乱レテ而テ主安カラズ。