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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
独逸に居た私は、嫂からの急電により、この変事を知りましたが、即刻帰朝の決心をし、その旨を嫂に向けて返電いたしました。しかし、如何に早く帰国したいと言って、西伯利亜鉄道を利用することも、米国まわりにすることも、私の健康が許されそうもなかったので、矢張り四十日を費して欧州航路を逆にとることにしました。このことは電報の中に書いて置いたのです。
一方、兄の急死によって陰鬱さを増した赤耀館では、雇人が続々と暇を願い出ました。嫂も百合子も、盛んに慰留しましたが、彼等はどうしても止まろうとは申しません。勝見は嫂や百合子と雇人たちの間に立って苦しんでいましたが、遂に彼自身すら、暇を願い出るようなことになりました。
「勝見さんも止したいというの。皆の真似をしなくてもいいでしょう」と百合子が皮肉めいた口を利きました。
「決してそう言うわけではありません。唯私の健康状態が許しませんので……」
「あんたが居なくなっちゃうと、今度は、姉さんの健康状態がわるくなってよ」
「どういたしまして。お姉様のようにお美しい方のところへは、幾人でも忠実な男がやって参ります」
「まあ、勝見さん。お上手なのねえ――。