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せきようかんじけんのしんそう

赤耀館事件の真相

海野 十三

「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页

青空文庫

私どもの実験は綾子夫人を犯人として画き出すほか、何の効果もありませんでした。しかし私は夫人を犯人とするに忍びないのです。いやまだまだ此の室には、私達の未だ発見していないような参考資料がある筈です。第一に探し出さねばならぬことは、丈太郎氏は如何なる手段によって青酸を口にせられたかということです。コップの中に青酸加里があったとすると、綾子夫人も青酸瓦斯を吸いこんで命を其の場に喪った筈なのです。お嬢さんにお伺いいたしますが、丈太郎氏は、何かものを口にくわえるといった風な癖をお持ちではありませんでしたでしょうか」

「まあ、よく御存知でいらっしゃいますこと――私もウッカリ忘れて居ました。兄は不思議な癖のもち主でございました。こういう風に左手の親指と、人差指と中指とをピッとひねり、そのあとで人差指と中指とを一緒に並べたまま、下唇の内側をこんな風に……」

「ま、待って下さい、お嬢さん、そんな悪い真似は本当におやりにならぬように。しかしそれはいいことを伺いました。第三の発見ができるかも知れません。尾形さん、そこにある受信機をそのままそっと窓の方へ一緒に担いで呉れ給え。