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せきようかんじけんのしんそう
赤耀館事件の真相
海野 十三
「新青年」博文館、1929(昭和4)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,797 字 · 60 页
受信機のあった丁度真下と思われるところに、さきほど彼が点検したと同じ形の目盛盤が一個、腹をむけて転っていたのでした。
赤星探偵は、その小さい目盛盤をピンセットの先に挿みあげましたが、それを紙の上に置くと青酸加里の白い粉をパラパラと削り落し、今度は懐中から虫眼鏡を出してのぞいたようですが、
「尾形さん、ここにある指紋を見て呉れ給え。こっちの方のは彼奴の左の人差指にちがいなかろう!」
警部はポケットから指紋帳を出して較べていましたが、驚きと悦びの声をあげて、
「彼奴の指紋だ。とうとう証拠を押えちまったぞ」
「お嬢さん、大方様子でお察しのとおり、ある人間が、お兄さまの癖を利用するために、あの受信機のダイヤルに、青酸加里をぬりつけて置いたのです。不幸なお兄さんは、あの夜時報を受けるとて受信機の目盛盤を廻しているうちに、左の指に青酸加里をベットリつけてしまいました。開閉器をきり、綾子夫人からレモナーデを受けとる前に、青酸加里は指から口の中へ既に、いとたやすく搬ばれていました。右手でレモナーデのコップをとりあげて一息に飲み下したのだから、何条たまりましょう。たちまち青酸瓦斯が体内に発生して一分と出でぬ間に急死してしまったのです。