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ちょうかきんむ

超過勤務

山本 周五郎

「文藝朝日」朝日新聞社、1962(昭和37)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,619 字 · 31 页

青空文庫

ように気分をひきたて、揉み手をして照合を続けた。

右側のドアがあいて、一人の少女がはいって来た。おとなっぽいスーツを着、髪も化粧もおとなっぽくつくっているが、よく注意して見ると十八歳そこそこ、まず十七歳のなかばというところであろう。まだ細い体に、ふくらみはじめた胸と腰とが発達して、他の部分の育ちきらないのと奇妙に不均衡な対照を示し、不均衡であることから一種のいろけをふりまくようにみえた。

「あらよかった」と少女はおおげさな身振りで彼のほうへ駆けよった、「おじさんいてくれたのね、もう帰っちゃったんじゃないかと思って、心配してとんで来たのよ」

「こらこら、静かにしないか」と彼はむずかしい顔つきで云った、「いそがしいんだから僕にかまわないでくれ、これを見ろ、まるで」

「あちしもいそぐのよ」少女は彼の肩に手をまわし、彼の頬へキスをした、「ねえーお願い、お小遣かしてえ」

「こら、ばかなまねをするな」彼はキスされた頬へ手をやりながら、少女をそっと押しのけた、「人が見たらどうする、すぐうわさになってしまうぞ」

「平気よ、こんなキスくらい親子だってする