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おどるせんじょう

踊る線条

寺田 寅彦

「東京朝日」1934(昭和9)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,769 字 · 4 页

青空文庫

だけは曲の構造をよく知っている上に、光像の踊りも簡単であるから、比較的らくに光像の進行を追跡することができたようである。第一のテーマは楽譜の形からも暗示されるように、彗星のような光斑がかわるがわるコンマのような軌跡を描いては消える。トリラーの箇所は数条の波線が平行して流れる。

第二のテーマでは鉛直な直線の断片が自身に並行にS字形の軌跡を描いて動く。トリオの部分は概して水平な短い直線の断片が現われてそれがちょうど編隊飛行の飛行機が風に吹き散らされてでもいるような運動をする。これを見ながら同時にこの曲を聞いているといくらかこの映画作者の気持ちを理解することができるような気がする。

その他の曲にはなかなか複雑な仕組みのものもあったが、たとえば大小の弦楽器が多くは大小の曲線の曲線的運動で現わされ真鍮管楽器が短い直線の自身に直角な衝動的運動で現わされたり、太鼓の音が画面をいっさんに駆け抜ける扇形の放射線で現わされたりする場合が多いようである。トランペットやトロンボンのはげしい爆音の林立が斜めに交互する槍の行列のような光線で示されるところもあったようである。