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ぐんようそ

軍用鼠

海野 十三

「新青年」博文館、1937(昭和12)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,659 字 · 37 页

青空文庫

夜になるとこの鋲は見えなくなるから、代りに道の両側に信号灯が点くような仕掛けになっている。

その国境線を間に挿んで両側に、それぞれの国の材料で作ったそれぞれの形をした踏切の腕木のようなものがある。国境線上を通過する者があるたびに、この二つの腕木がグッと上にあがるのだった。国境越えの人々は、その腕木の下を潜って、相手国のうちに足を入れ、そしてそこに店を開いて待ちうけている税関の役人の前にいって国境通過を願いいで、そして持ち込むべき荷物を検査してもらうのである。それが済めば、そこで税関前の小門から、相手国内にズカズカ這入ってゆくことを許されるのである。

まあ道具立はそのくらいにして置いて、ここに紅国人の有名なる密輸入の名手レッド老人を登場させることにする。

「また一つ、頼みますよ。ねえ、税関の旦那ァ。――」

レッドの銅鑼ごえに(この前にドラを銅羅と書いたのは誤り。どうもすこし変だと思って今辞書を引いてみると、ラの字は金扁があるのが正しいのであった。小説家商売になるといちいち字を覚えるだけでもたいへん骨の折れることだった)――そのレッドの銅鑼ごえに奥の方から役人ワイトマンが佩剣のベルトを腰に締めつけながら、睡むそうな顔を現した。