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かるいざわ
軽井沢
寺田 寅彦
「経済往来」1933年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,190 字 · 13 页
あらしのせいかと思って聞いてみると、ことしの春の雪に折れたのだそうである。降雨のあとに湿っぽい雪がたくさん降って、それが樹冠にへばりついてその重量でへし折られたそうである。こういう雪の山路に行き暮れて満山の雪折れの音を聞くということは、想像するだけでも寒いようである。
ホテルの三階のヴェランダで見ていると、庭前の噴水が高くなり低くなり、細かく砕けたりまた棒立ちになったりする。その頂点に向かう視線が山頂への視線を越しそうで越さない。風が来ると噴水が乱れ、白樺が細かくそよぎ竹煮草が大きく揺れる。ともかくもここのながめは立体的である。
毎日少しずつ山を歩いていると足がだんだん軽くなる。はじめは両足を重い荷物のようにひきずり歩いていたのが、おしまいには、両足が立派な独立の存在となって自分で自分を運搬するばかりか、楽々とからだのほうをかつぎ歩くようになって来た。この傾向がどこまでも続いたら、おしまいには昔話の仙人のように雲に駕して山から山を飛び歩けそうな気がする。仙人の話は存外こんな想像からも生まれ得たのである。
碓氷峠を下って関東平野にかかると今さらに景色の相違が目に立つ。