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じてん
辞典
戸坂 潤
「経済学大辞典 第四巻」岩波書店、1931(昭和6)年10月、「経済学大辞典 第五巻」岩波書店、1932(昭和7)年1月、「経済学大辞典 追補」岩波書店、1936(昭和11)年10月、「教育学辞典 第一巻」岩波書店、1936(昭和11)年5月、「教育学辞典 第二巻」岩波書店、1937(昭和12)年2月、「現代哲学辞典」日本評論社、1936(昭和11)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 96,131 字 · 186 页
各種の実在の内でも特に客観的存在が就中実在としての資格を有っているという主張であって、もしこの主張に根拠がないとすれば、同様に観念論の存在観にも根拠がないということになる。それから認識は模写だという模写説は実は認識そのものの一つの説明というよりも、認識ということの同語反覆的な云い直しに他ならぬ。認識は一切の実践的理論的手続を介して成立するのであるが、併し認識と認識される客観的事物との直接関係は、全くの直接関係であって、その間に何等の媒介物を有たない。それがありのままに写すという言葉の意味である。之が丁度現物がエーテルという虚空のみを介して鏡に像を結ぶ関係に喩えられて、認識するということを写すというのである。従って所謂模写説に対する非難は本末が顛倒しているのである。
さてこういう風に弁護された限りの所謂素朴実在論とは、要するに唯物論の認識論のことに他ならない。事実唯物論はそれが素朴実在論であるということによって非難されて来た。処がその素朴実在論とは、観念論者が唯物論の実際の主張とは無関係に仮想敵として造り上げた勝手な改釈によるものでしかなかった。常識や自然科学者が信頼すると云われる所謂素朴実在論とは、正確には唯物論のことに他ならない。