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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

菊太は沈黙の間に話の順序を組たてるのである。出来るだけ哀れっぽく、哀願的に聞える様に苦心するのである。

考えて居る間も、他の百姓の様に、故意とらしい吐息をついたり、悲しい顔付をして見せるでもなく、只、ボンヤリ気抜けの仕た様に考え込んで仕舞うのである。自分の満足した考えを得るまで必して口を切らない。そんな時には、益々頬のたるみが目につき、小さい眼は倍もショボショボになって居るのである。

しばらくだまって居たっけがやがて頭をあげて、小さい庖丁をつかって居る祖母の手許を見ながら云い出した。

「御隠居様、

御年貢の分だけは、はあどうにか斯うにか取りましただハイ。

それは確なことでやす。

けんど貧亡者は、いつでも貧亡でなし、

御年貢は取れてもはあ、去年の鬼奴がまだついてやすでな。

祖母はだまって居る。

鶏も鳴かない静かな中にパチンパチンと乾いた「くるみ」のからの破れる音が澄んで響いて居る。

菊太は私を見た眼をすぐ祖母にうつして又云い続ける。

「去年は草取頃に、婆様にはあ逝かれて、米と桶の銭を島の伯父家に借りさあ行って事うすましやした。悪い時にゃあ悪い事べえ続くもんで、その秋にゃ娘っ子が死にやしたかんない。