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のうそん

農村

宮本 百合子

「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页

青空文庫

大きな声で話すのならそうでもないだろうけれ共、低い低い声でうめく様に云うのだから、聴くものの気がめ入る様に陰気になって来る。

それが此の男のねらい処である。自分が、口がうまく廻らない話下手だと知ってからは、いつでも聞手の泣きそうになるまで、クドクドと何か云ってききあきて五月蠅なって来るのを見すまして本意を吐くのが常であった。

祖母はもうききあきて来る。

始めの中は煙草の火などを出してやった下女も、もう前の庭で草の手入を始め、祖母も聞いて居ない様な顔をして「くるみ」を破っては小さいかごにためて居る。只、今の処は私ばかりが菊太の忠実な聞手である。菊太をつくづく見たいばっかり、知りたいばっかりに私は一言も口は利かないながら、わきに座って居る。

話そうと思った事をあらまし話して仕舞うと、次に話す事を考えでもする様に、体に合わせて何だか小さい様に見える頭を下げて、前歯で「きせる」を不味そうにカシカシかみながら、黙り込んで居る。

百姓などで、東京のものの様に次から次へと考えずに話をするものが有ったら、それは大抵善い方に利口ではないものである。

他人の事を悪し様に云い、一寸したものをちょろまかさない位の農民は、大抵この男の様な様子をして話すものである。