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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
田地の事、作物の事、小作男の不平やら、思わしい収獲を得ない田畑の物などの話は聞いても、それは只、話す人の気休めのために話すので私に相談する事はない、私の聞いても喜ばない事は聞かずに居られる、幸福な事だ。
一俵まけてくれ、と菊太が願うのは祖母に向ってで私にではないけれ共、やっぱり祖母が思うと同じ様に、そんなに御意なり放題にして居てはいけない、と思う。
何故そんなに、いつもいつもきっぱり出来ないんだろう、と思う。
私までが菊太に対してあんまり良い気持は持たない。私と同じ様に、女中だってやっぱり何となし、変な男だ位には思って居るにきまって居る。
祖母が、菊太の話を聞くのがいやで連れられて、私達まで何だか知らんが菊太は意くじのない男だと思う。斯んな様にして、家内の人数が多ければ多いほど、何だかいけすかない小作だ、と思う気持が大きくなって、男の気の早いのや息子でも居るとつい云わずとも良い事まで云い、「ひやかし」の一つも云う様になってますます両方の間が不味くなるのであろう。
祖母は、「私はもうこの年になって、小作男を泣かせても気持の悪いばかりだから、盆、暮に金をやるのを一度にやったと思って居るのさ」