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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
木の枝に火がついて立つ煙が目にしみてしみてたまらないので、
「こんな煙っぽくっては眼に悪いねえ。
と女中を見ると、崩れた薪をなおすために煙のまっただ中に首を突込んで何かして居る。こもった様な声で、
「赤坊の時から、煙の中で乳すうて居ますだもの。眼が馬鹿になって居ますのだ。寒い朝ですない。風邪引きなさいますよ。
若い女中は、私の横顔を何か、さがし物でもする様に隅から隅まで見て居る。
「大丈夫だよ。今年は、冬が早く来る様だねえ。
と云って居ると土間の処で、
「お寒うござりやす。」
と中年の女の声がする。女中が座ったまま、
「誰だい?
と云うと、
「己だが。
と云う。
「ああ、甚助さん家のおっかあか、お上んなね。
「畑さ行のよ、東京のお嬢様いらっしゃるけえ、ちょっくら呼んで来ておくんなね。
女中はチラッと私の顔を見て、
「お起きんなったばっかりだによ、着物でも着換えてからいらっしゃるだべ。
と云って茶を入れ始めた。
「何にしに来たんだろう。
と思いながら大いそぎで着換えて土間の処へ行くと、鍬をわきにころがして、もじゃもじゃの頭をして胸をダブダブにはだけた四十近い様な女が立って居る。私の顔を見ると急に腰をまげて、