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のうそん
農村
宮本 百合子
「多喜二と百合子 七号~十三号」多喜二・百合子研究会、1954(昭和29)年12月~1955(昭和30)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,223 字 · 97 页
鴨の肉は好いて居ない。何だか鴨くさい臭がする様だ。鴨雑煮をすると云って居る。私は裏へ行かない。こしらえるのを見ては一切だって喉を通るものではない。甚五郎爺は薬だと云って鳥の「きも」を出すとすぐ生のまんまのむと聞いて、私は喉へ丸が上って来るようだった。鳥にも「きも」なんてあるものかしらん、私は獣ほかない様な気がして居た。昨日の雪見舞の者達に皆食べられて餅がないので女中は源平団子にもちごめと引きかえに餅をとりに行った。東京の鴨の様に臭がない。
お八つ頃、例の芝居ずきの御婆さんを呼んでやる。結構だ結構だと云いながら、年に合わしては随分沢山たべて、こないだ見て来た多助の芝居の話をした。多助が「青」と別れる処をどれほど感動したものか、泣きながら、
「貴方――芝居は青の別れに限りやすぞい、別れたくないって、多助の頬に、自分の頬をすりつけてない。
と云った。十二時頃、小一里も歩いたので風邪を引いたと云って、赤坊の様にケン、ケンと云う「セキ」をして居た。鴨の肉のただ煮たのを小さな皿に持って行った。
「粥でも作るつもりだかし」と祖母は笑って居た。
湯のたて廻しと云う事が行われて居る。