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とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
医者は無論、私が呼びに行ったのです。この際医者を呼ばないわけには行きません。かけつけた医者は即座に流行性感冒と診断しました。県下に、はやって居るこの病気に私の子が罹る事は少しも不思議ではありません。医者は更に、ひろ子が可なり危険な状態にある事、肺炎をおこしつつある事を注意し、いろいろ湿布の仕方などを私に説いて帰って行ったのでした。
私は、わざと不完全な湿布をやりながら、後から医者の家まで薬を取りに行きました。なるべく時間をとるようにしたいのですが、それは、どうも不自然ですから、適当にいそいで、往復しました。しかし、私のこの顧慮は、必要のなかった事でした。何故ならば、帰宅した時はひろ子の病勢は著しく進んでいましたから。
その真夜半、ひろ子が余り苦しむのを見かねて、妻が私に医者の許まで行ってくれと頼みますので、いそいでかけつけ門を叩いて見ましたが、幸いにも――全く幸いにもです、こういう言葉の使い方は悪魔の辞書にのみ見出されるはずです――医者は、同じような急患者の所に往診して居て不在、結局、来てくれたのはそのあくる日の昼頃でしたが、その時は既にひろ子は全く絶望の状態にありました。