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とじょうのはんにん
途上の犯人
浜尾 四郎
「犯罪科学」1930(昭和5)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,477 字 · 38 页
けれどただ一つ承りたい点がある。君は要するに、犯罪の目的に成功しているのではないか。妻との間の障害物はなくなったのではないか。しかも世界の誰一人だって、君を疑っていない事は君自身も云っている。果たして然らば、君は僕に感謝をしていい筈じゃないか。君の子はもう二ヶ月半も前に骨になっている。今更誰も疑うものはない。何故それならば君はさっきから、僕を批難するのだろう」
彼はこの時、急に又凄い目付をした。そうして、苦しそうに頭の毛を自分でつかみながら、唸るような声をあげた。
私は誰か怪しみはしないかと、驚いてあたりを見廻したが、誰も幸いに気がつく者はなかったようである。
「それだ! それなんだ。私があなたを恨むのは! あなたは犯罪の方法を教えた。殺人をはっきり教えた。しかし、良心を捨てる事を教えなかったじゃないか。……ああ、人殺しのあとの生活、私はたまらないんだ。苦しいんだ。良心をすてなけりゃ生きては行かれない。おまけに、あんなに完全にやったにも不拘、私は毎日刑事に追いかけられているような気がしてるんだ。ひろ子の、あの小さなひろ子の手が土の中から出て、私をさしているような気がするんだ。