轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

どうひょう

道標

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,402 字 · 19 页

青空文庫

然し、照子はいつもの通りの様子で、心に何の懸念もなさそうでした。――木原はもう酒をたくさん飲んでいる上に、更にまた飲みました。そして酔いました。照子とのことを近頃いろいろと思い悩んでる上に、前夜は思わず読書にふけって殆んど眠らなかったし、なにか苛立った憔悴のうちにありましたので、なおのこと酔いました。そしてソファーにもたれてとろとろとしましたが、眼がさめてみると、広間の光景が、同僚たちの有様が、へんに生々しく眼に映じてきました。三浦さんの家へ行ったものかどうかと、頭の奥のはるかな片隅で考えながら、広間の中を見渡しました。

白い塗料がくすんでる高い天井、幾つかの広告ビラが鋲でとめてあるだけの裸の壁面、コンクリートの床、配置を乱して一方へ片寄せられてる卓子や椅子……見ようによっては空き部屋とも思えるその長方形の広間に、なにか嘲笑の空気が漂っていました。それは何から醸し出されたものでしょうか。独特な思想を持ってる者や、常識的な共通な思想を持ってる者や、何等の思想をも持たない者たちが、各自に勝手なことを饒舌りちらしていたからでありましょうか。甘いのを好きな者や、酸っぱいのを好きな者や、辛いのを好きな者たちが、各自に飲んだり食ったりしていたからでありましょうか。