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みちづれ
道連
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页
それほど、田舎の広々とした平野は淋しい不気味なものなんだ。たとい月の光が千里を照らすというほど煌々と輝いていても、その光は物影とくっきり際立って見られる都会のと違って、眼の届く限り一面に降り濺いでるせいか、空の明るいわりに地面は妙にぽーとして、物に漉されたような頼りないものになってしまって、足許が変に心もとなく感ぜられる。例えばじかにさす電燈の光は、どこかはっきりと力強いが、あれに紗の布でも被せてみ給え、どんな高燭の光でも、室の中が明るいわりに畳の目はぼんやりしてくる。云わば盲いた光なんだ。広々とした田舎の月の光がやはりそうだ。明るいわりに足許が変に覚束ない。
で僕は提灯の火を頼りに、疲れた足を一生懸命に早めて歩いた。町から半里ばかりの間は、可なりの街道で、ぽつりぽつり人家も見えていたが、それから先は別れ道になって、大きな森をぬけ広い畑地を横ぎって村に着くまで、昼間でさえも人通りの稀な、人里離れた狭い道だった。
森にさしかかる頃から、僕はもう一心に提灯の光を見つめたまま、ぞーっと背後から寄ってくる恐ろしさに身を竦めて、息をこらして突き進んでいった。