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みちづれ
道連
豊島 与志雄
「中央公論」1924(大正13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,366 字 · 37 页
そこで、此度はも少し面白いのを聞かせよう。が一寸、煙草を一服吸ってからだ。
二
前の話から一年か二年後のことだった。僕の父が肺病にかかって寝ついてる時のことなんだ。
僕の父は痩せてこそいたが、平素は至極頑健なたちで、随分不摂生な生活をしても身体に障らなかった。それが不意に肺結核にとっつかれて寝ついた。何でも友人に結核の人がいて、その死際から葬式まで一切世話をしてやったので、その時に感染したのだとの話もあるが、そんなことはどうだか分ったものじゃないし、またこの話とも関係のないことだ。
で、父が肺病で寝ついたので、母の心配は大したものだった。十里も離れた都会から名医を迎えたり、新聞広告のあらゆる薬を取寄せてみたり、出入の人に頼んで鼈や鰻を絶やさなかったり、山羊を飼ってその乳を搾ったりして、出来るだけの薬や滋養分を与えたが、父の病気は少しもよくなる風はなかった。そのうち、村から三十里ばかり離れた所に、肺病に対する秘伝の妙薬があるということを聞き込んで、それを買いに自身で出かけたのである。
其処へ行く最も近道は、まだ交通の開けない昔のことなので、四里の田舎道を歩いていって、それから汽車に乗って、その先がまだだいぶあるとのことだった。