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なかがわのすずきつり
那珂川の鱸釣り
佐藤 垢石
「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,507 字 · 7 页
それは、鱸釣りだ。
私も、鱸釣りに経験がないわけではない。殊に、川鱸には東京にいたころ、取手の大利根川まで遠征したことがある。ところが、この役人の説くところの鱸釣りは、方法から餌に至るまで、私の初耳なのだ。河原の石に腰を下ろして、役人が細かく教示するのを、私は感心しながらきいた。
役人の釣り方は、こうなのである。いままで、東京方面から遠征してくる釣り人は、イトメやゴカイ、袋イソメなどを持参しているが、僕のやり方は、そんな高価な餌はいらない。蝦でよいのだ。しかも、その蝦はこの那珂川に棲んでいる川蝦である。川蝦は、長さ一寸前後、藻蝦よりも少し大きい。川岸の捨石や石垣、沈床の間などを這い回っているから、短い棒の先へ、鳥の羽根を結びつけて石の間から追い出し、手網のなかへ追い込むのだ。こうすると、二、三時間に五十尾くらい捕るのは苦労はいらぬ。
一回の釣遊に、五十尾の餌があれば充分だ。しかも、餌代不要だ。
竿は七、八尺。延べ竹で、穂先を鮎のゴロ引き竿の穂先ほど太くし、竿尻は鋭くしておく。それは、水の底の小石の間へ刺したてるためだ。道糸は、人造テグスの一分半くらいの太さのもの一把、二十間を全部用いる。