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ゆうびんきって

郵便切手

宮本 百合子

「労働者」1946(昭和21)年10・11月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,262 字 · 7 页

青空文庫

殺すな」で一貫していた。これは支配の鉄則とされていた。心のしっかりした農村の人々は今日のこの一銭切手を何と見るだろう。私はそう思って丁寧に、四銭の封緘にはり添えて獄中に送った。四銭の切手は議事堂、次の二銭は乃木大将、三番目の一銭はその農民たち。日本の或る姿がここに縮図されていた。

ところが、程なく、私たちはまた新しい図案の一銭にめぐり合うこととなった。その一銭に登場したのは若い勤労婦人の三分身像であった。白い布で頭をくるみ、作業服に白いカラーを見せ、優しくしっかりした横顔を見せている遠景には、何か工具らしいものが覗いている。女子の能力は男子の七十パーセント以上である、近代重工業にもふさわしい、と云われて、女子の技術補導所があちこちにつくられ、女子整備員のオバーオール姿が婦人雑誌に出された時代である。

これも一銭切手であることを、わたしは忘れられなく感じた。男子が戦争の犠牲としてひき出された後、日本の人口は女子の増大をもたらした。生活の支え手は女となった。戦争の道具のつくり手として女が狩り出された。どちらの意味からも女は生きるために働かなければならなくなった。