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とかいのなかのことう

都会の中の孤島

坂口 安吾

「小説新潮 第七巻第四号」1953(昭和28)年3月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,205 字 · 27 页

青空文庫

★

そのころ、赤線区域の某所でチヨ子という名で働きはじめた女があった。

ちょッとしたスタイルと美貌で、相当の客がつくようになったが、彼女はニヤニヤ笑いながら人々にこんなことを云った。

「私がこんなところで働くのは、当分身を隠す必要があるからよ。私、狙われてるのよ」

「別れた亭主にだな」

「まアそんなものね」

「じゃア、いつまでも埒があかないじゃないか。一生隠れている気かい」

「誰かが死刑になるまでね。よく知らないけど、そんな話さ」

「亭主は刑務所にいるのか」

「知らないよ」

とりとめのない話であった。

まもなく一人のジゴロがこの女と仲よしになった。ジゴロは男前だが、腕ッ節も強く、この区域で睨みのきくアンチャンだった。

やがて女はこのジゴロにだけみんな打ち開けた。結婚してもいいと思ったからである。女はミヤ公であった。

「すると、中井が犯人か」

「そうよ。カンバンになってから酔っ払いがきてごてついてる声がしたから、私が降りてッたのよ。酔っ払いじゃなくて、中井さ。泊めてくれって頼むから、私の部屋には泊められないけど、夜明けまでお店にでも寝てるがいいやッて放ったらかして二階へあがっちゃったのさ。