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しゅうぶん

醜聞

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页

青空文庫

ことに吾平という男が付いているのだし、自分の女に乞食までさせるようだとすると、性分もより悪くなっているだろう。さくらを手先に使ってこちらの肚をさぐり、もっと多額な金がゆすれるとみて、新らしい方法をとるために、急にいどころを変えたとも思える。

「表沙汰にできたらなあ」と功兵衛はまた呟いた、「――しかし瘤があるからな、侍の面目、家名、人には見せられない瘤か、さくらにはそれが見えたんだな」

もしもかれらが新らしい手を打ってくるとすれば、もう隠しとおすことはできない。妻ふじは子を産もうとしている、さくらを病死と届け出たことや、偽りの葬礼などもあばかれるだろう。けれども、それを逃げていてはだめだ、どういうことになろうとも、いまこそ正面から事実にぶっつかるときだ、と功兵衛は肚をきめた。――かれらがなにか企んでいるとすれば、さくらがまた呼びかけるにちがいない。そう思ったので、下城のときには必ず供を先に帰らせ、功兵衛はいつもの道を通って独りで帰った。二度めに降ったのが根雪になり、それからほぼ一日おきくらいに、乾いた粉雪が降った。功兵衛は同じ道をまいにち通ったが、呼びかける者はなかった。