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しゅうぶん

醜聞

山本 周五郎

「小説新潮」新潮社、1964(昭和39)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,900 字 · 46 页

青空文庫

しかし本当にそれがさくらだったろうか、吾平はどうしたのかという疑問が残った。

「男もいっしょだったそうです」と堀が続けた、「そういう宿のしきたりで、宿帳なども正確ではありません、女はおさい、男は吾助ということでした」

「男はどうしました」

「ほかの女と出奔したそうです」

おさいと吾助、それならかれらに相違ないだろう。堀三左衛門の語るところによれば、二人は三十日ほどまえから泊っていた。男も女も酔っぱらいで、朝から焼酎を飲み、酔えばすぐ喧嘩が始まり、殺してやるとかさあ殺せという騒ぎになった。男のほうは博奕が好きなようで、いつも賽ころや花札をもてあそんでいたが、賭場へゆくほどの銭も気力もなく、同宿の客をさそっては博奕をやっていたが、誰とやっても負けるばかりだったし、かなりな借りができてしまった。女は夕方ちかくになると宿を出てゆき、なにをするのかわからないが、僅かながら銭を稼いで来た。からだを売っているとも云われ、乞食をしているのを見た、という者もいたそうで、いずれにせよ屋根代も満足には払えなかった。

「そうして十三日まえの夜、女が酔って帰ると、男はいなくなっていた」