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やこ
野狐
田中 英光
「知識人」1949(昭和24)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 19,615 字 · 39 页
お客の種類は土建か貿易関係の連中の接待が多いという。酔っ払って女給の腰に抱きつきながら、尻ふりダンスをしている老人客、ジッと抱き合ったまま動かない、怪しげなシミダンス。私はそれで、「上品な酒場」の正体が分った気がする。
私がいわゆる、桂子の旦那だと分ると、私は店の奥の、外人客が通されるという、特別な囲いに案内され、四、五人の女給たちが私をとり囲んだ。桂子にはとにかく、まじめになりたいという気持が感じられるが、その四、五人の女たちは、全く典型的な娼婦のように私には思われた。ただ金と男と、うまいものと、酒が欲しいという顔であり、話である。私は、桂子がこんな女たちのひとりと、客の取り合いをして泣いたという話を思いだし、たちまち、彼女にこうした勤めをさせたくなくなった。
全てか、然らずんば無か、私のこうした極端な気持が一度、共産党と喧嘩すると、今度は淫売婦のふところに飛びこませた。私は再び、そのような極端な気持になったのである。私はもう一度、妻子を棄て、桂子を自分の妻にしようと思った。それは勿論、彼女に勤めを止めさせてである。
桂子と同棲中、私は彼女から逃げようと思い、彼女のため、池袋にマーケットを買ってやったことがある。