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のぎくのはか

野菊の墓

伊藤 左千夫

「ホトトギス」1906(明治39)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 33,539 字 · 67 页

青空文庫

話は一寸途切れてしまった。

何と言っても幼い両人は、今罪の神に翻弄せられつつあるのであれど、野菊の様な人だと云った詞についで、その野菊を僕はだい好きだと云った時すら、僕は既に胸に動悸を起した位で、直ぐにそれ以上を言い出すほどに、まだまだずうずうしくはなっていない。民子も同じこと、物に突きあたった様な心持で強くお互に感じた時に声はつまってしまったのだ。二人はしばらく無言で歩く。

真に民子は野菊の様な児であった。民子は全くの田舎風ではあったが、決して粗野ではなかった。可憐で優しくてそうして品格もあった。厭味とか憎気とかいう所は爪の垢ほどもなかった。どう見ても野菊の風だった。

しばらくは黙っていたけれど、いつまで話もしないでいるはなおおかしい様に思って、無理と話を考え出す。

「民さんはさっき何を考えてあんなに脇見もしないで歩いていたの」

「わたし何も考えていやしません」

「民さんはそりゃ嘘だよ。何か考えごとでもしなくてあんな風をする訣はないさ。どんなことを考えていたのか知らないけれど、隠さないだってよいじゃないか」

「政夫さん、済まない。私さっきほんとに考事していました。