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きんのわ

金の輪

小川 未明

「読売新聞」1919(大正8)年1月21~23日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,640 字 · 4 页

青空文庫

一

一

太郎は長い間、病気で臥していましたが、ようやく床から離れて出られるようになりました。けれどまだ三月の末で、朝と晩には寒いことがありました。

だから、日の当たっているときには、外へ出てもさしつかえなかったけれど、晩方になると早く家へ入るように、お母さんからいいきかされていました。

まだ、桜の花も、桃の花も咲くには早うございましたけれど、梅だけが垣根のきわに咲いていました。そして、雪もたいてい消えてしまって、ただ大きな寺の裏や、圃のすみのところなどに、幾分か消えずに残っているくらいのものでありました。

太郎は、外に出ましたけれど、往来にはちょうど、だれも友だちが遊んでいませんでした。みんな天気がよいので、遠くの方まで遊びにいったものとみえます。もし、この近所であったら、自分もいってみようと思って、耳を澄ましてみましたけれど、それらしい声などは聞こえてこなかったのであります。

独りしょんぼりとして、太郎は家の前に立っていましたが、圃には去年取り残した野菜などが、新しく緑色の芽をふきましたので、それを見ながら細い道を歩いていました。

すると、よい金の輪の触れ合う音がして、ちょうど鈴を鳴らすように聞こえてきました。