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きんせんについて
金銭について
山本 周五郎
「労働文化」労働文化社、1961(昭和36)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,221 字 · 11 页
――金銭は附帯的なもの――
答 私は爪に火をともすような生活をして意義を見出しているような人も、事実、存在すると思うのですが、それがその人にとって最もうるわしく、充実した、極めてエキサイティングな情熱で打ちこんでいるのであれば、他所のひとが、奴は爪に火をともしているとかケチだとかいうのは余計なことなんであると思います。
たとえば蚤のサーカスというのがありますが、蚤をあそこまで訓練するということを考えると、だいたいならば、その馬鹿馬鹿しさにあきれるだろうと思います。この場合、爪に火をともす生活と、蚤のサーカスをこしらえることとは、決して区別すべき問題ではないんで、人間があるひとつのことに情熱をついやすということになれば、それは金を貯めようと蚤のサーカスをつくろうと同じだと考えます。
――金銭は附帯的なもの――
問 すると、先生は金銭というものをどうお考えになりますか?
答 金銭というものは、あってしばしば便利である。しかし、なければ絶対に生活できないものではない。ただ生活するのには、便宜上あるほうが、たまたま便利である、という程度のものであると思う。金銭というものは、こちらの欲しいもの、向うの欲しいものをお互いに交換しあう際、いちいち秤にかけて計量するよりも、その代価として考えられた手っ取り早い流通手段である。