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きんぎょうり

金魚売り

小川 未明

「赤い鳥」1927(昭和2)年6月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 3,210 字 · 7 页

青空文庫

「金魚やい、金魚やい――。」と、呼びました。

子供たちが、その声を聞きつけて、どこからかたくさん集まってきます。その子供たちは、なんとなく乱暴そうに見えました。金魚の泳いでいる中へ棒をいれて、かきまわしかねないように見えました。おじいさんは、そうした子供たちには、売りたいとは思いませんでした。

「きれいな金魚だね。」

「僕は、こいのほうがいいな。」

「こいは、河にすんでいるだろう。」

「いつか、僕、釣りにいったら、大きなこいが、ぱくぱく、すぐ僕の釣りをしている前のところへ浮いたのを見たよ。」

「赤かったかい。」

「黒かった。すこし、赤かった。」

「うそでない。ほんとうだ。」

その乱暴そうな子供たちは、もう金魚のことなんか忘れてしまって、棒を持って、戦争ごっこをはじめたのです。

おじいさんは、笑い顔をして、子供たちが無邪気に遊んでいるのをながめていましたが、やがて、あちらへ歩いてゆきました。村を離れると、松の並木のつづく街道へ出たのであります。その松の木の根に腰をかけて、じっと、おけの中にはいっているたくさんな金魚の姿をながめていました。こうして、おじいさんは、自分の育てた金魚は、残らず目の中に、はっきりとはいっていたのでした。