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くぎぬきとうきちとりものおぼえがき

釘抜藤吉捕物覚書

林 不忘

10 宇治の茶箱

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,760 字 · 24 页

青空文庫

ま背後の板戸を締めてもらって、あらまし事の次第を承わるとしようじゃねえか。」

言われたとおりに背手に戸を閉めきった仙太郎はまた改めて、

「親分。」

と声を潜めた。この若者の大仰らしさにいささか度胆を抜かれた形の藤吉と彦兵衛は、今は眠さもどこへやら少しおかしそうな顔をして首を竦めていたがそれでも藤吉だけは、

「何ですい?」

と思いきり調子を落して相手に釣り出しをかけることだけは忘れなかった。冷え渡った大江戸の朝の静寂が、ひしひしと土間に立った三人の周囲を押し包んだ。どこか遠くで早い一番鶏の鳴く声――戸面の雪は小降りか、それとも止んだか。

「親分、旦那が昨夜首を吊りましただよ。」

呆然と戸外の気勢を覗っていた藤吉の耳へ、竹筒棒を通してくるような、無表情な仙太郎の声が響いた。瞬間、藤吉はその意味を頭の中で常識的に解釈しようと試みた。と、気味の悪いほど突然に、葬式彦兵衛が高笑いを洩らした。

「仙さん、お前寝る前にとろの古いんでも撮みなすったか、あいつあよくねえ夢を見させやすからね。はっはっ。」が、おっ被せて仙太郎が色を失っている唇を不服そうに尖らせた。

「夢じゃありましねえ。