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かなづち

鉄鎚

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,659 字 · 62 页

青空文庫

という国際電報が掲載されたのは、その翌日の夕刊のことであった。

叔父は一躍して相場師仲間の大立物になった。出入りするお客の数は三倍位になった。田舎の出米の相場を直接に聞くようになったために電話の忙がしさは数倍に達した。けれども叔父は電話機も殖やさなければ店も拡張しなかった。ただ私の手当てを一躍五十円に引き上げたほかに、私がトックの昔に忘れていた、親孝行に対する新聞社の同情金を叔父が保管していたものが、元利合計二百何円何十何銭かになっていたので、プラチナの腕時計を一個買って下げ渡してくれただけであった。

しかし叔父はそれから後、私に電話以外の用事を絶対に云いつけなくなった。新しい通勤の給仕を一人置いて今までの私の雑務を引き継がせると同時に、各地方の相場を聞く私の態度にすこしも眼を離さぬようになった。電話を伝わって来る相場に限って私が持っている……それこそ悪魔のような敏感さを、叔父がズンズン理解し始めている事が、私に又ズンズン感じられた。

「きょうはトテモ線がわるいんです。広島か岡山あたりで大雪が降って断線しそうになっているんです。きょうの後場の大阪電話はこの調子だと来ないかも知れません」