轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
かなづち
鉄鎚
夢野 久作
「新青年」1929(昭和4)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 31,659 字 · 62 页
とした薄笑いが片頬に浮き上って来たのであった。
「あなたはエライ方ね……」
私は悠々と自分の足の爪先に視線を返しながら答えた。
「どうして……」
「あまり驚かないじゃないの」
「驚いたって仕様がないさ。そっちで勝手にする事だもの……」
「マア……口惜しいッ……」
と不意に金切声をあげた彼女は、血相をかえて掴みかかりそうになった。私はそれを避けようとしてドブリと湯の中へ落ち込んだが、その拍子に鼻の穴から湯が這入ったのを吐き出そうとして、烈しく噎せびながら湯の中に突立った。肩から胸へかけて薄い寒さを感じつつ、濡れた髪毛を撫で上げ撫で上げやっとの事で眼を見開いた。
見ると彼女は蛇紋石の流し場に片手を支いたまま、横坐りをして、唇をシッカリと噛んでいた。エバを取り逃がした蛇のように鎌首を擡げて、血走った眼で私を睨み上げていたが、やがて、怨めしそうに切れ切れに云った。
「……あたしの気持ちはわかっている癖に……あなたがソンナ悪党ってことは……妾……きょうが今日まで知らなかったわ……にくらしい……」
こう云いながら彼女は又も、その大きな眼をグルグルさして、二三度入口の方を振り返った……と思うと不意に、スックリと立ち上って、無手と私の両手を掴みながら、抱き寄せるようにして湯の中から引っぱり出した。